中央線に2階建てグリーン車を導入!そのメリットとデメリットは?

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2023年度末、中央線の通勤車両に新しくグリーン車両のサービスを開始するというニュースが公式で発表されました。(公式発表の内容について)それに伴い一部の駅ではホームの延伸工事、一部の車両ではサービス拡大に向けた車内トイレの設置を進めています。

しかし中央線にグリーン車を導入するという噂はかなり前からあった (2015年頃に導入することを発表) にも関わらず、導入からサービス開始に踏み切るまでにはかなりの時間がかかっています。

もちろんそれなりに賛否両論が続いたわけですが、今回は中央線にグリーン車を導入するメリットとデメリットを推測も含めて考えていきます。(主観多めなのであくまで一意見としてとらえてください。)

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グリーン車導入のメリット

さっそくグリーン車を導入するメリットから見ていきましょう。

ゆったりとした席でくつろげる

中央線に限らず通勤型電車の座席は基本ロングシートとなっており、座り心地に適しているわけではありません。

路線によっては椅子を並べたクロスシートがある車両もありますが、通勤型電車はどちらかというと輸送人員を増やすために設計されたものなので座るスペースをなるべく減らした方がむしろ良いとされていました。

しかし、グリーン車は完全に座席として存在しているので輸送人員増加よりかは座り心地を強化しています。シートピッチも当然広くなるので座った時にもストレスなくくつろぐことができます。

輸送力の強化

中央線は1編成10両で運転されていますが、そこに2両分のグリーン車両が加わるのでグリーン車設備付きの編成は12両となります。 つまり従来の車両に増結する形となるので、実質輸送力を上げることになります

各駅停車との差別化を図れる

中央線は快速と各駅停車の2種類に分かれます。快速はオレンジ色、各駅停車は黄色(東京メトロ東西線直通は青(中野~三鷹のみ))と区別され、今回のグリーン車設備対象は快速電車となっています。

中央線快速電車
中央線快速電車(御茶ノ水駅にて)
中央・総武線各駅停車
中央・総武線各駅停車(新宿駅にて)

快速電車は御茶ノ水~三鷹で中央・総武線各駅停車と並走しており、どちらもラッシュ時の本数は2〜3分に1本のペースとなっているためあまり差が見られません。そこにグリーン車を導入すれば長距離運用にも適した「快速」と沿線利用者のアクセスを重視する「各駅停車」との差別化が生まれるため、利用者の分散を図ることができます。

グリーン車導入のデメリット

続いてグリーン車を導入するデメリットです。

折り返し運転の整備時間

中央線は2分に1本の間隔で運行されるので、終点に着いた後の折り返し運転でおこなう出発準備にかける時間もかなり短いです。グリーン車はロングシートとは違い座席周りの整備も必要となるため、座席の方向転換や周囲の清掃などの整備にかける時間が必然的に短くなります

もちろんコスト面においても整備するための人件費などがかかるため、導入するのにも抵抗があったのかもしれません。

グリーン車の利用時間を限定すれば整備時間を考慮せずに運行は可能となりますが、これを行うと輸送力が不足するおそれも見込まれるため、運用開始後も大きな課題となるでしょう。

さらなる遅延拡大の可能性

中央線は過密ダイヤであるがゆえに利用者も多いため、しょっちゅう遅延が発生します。私自身も中央線をよく利用していますが、遅れない日があるのは珍しいと思うくらい遅延の発生率が高いです。(1週間のうち3~4日のペースで遅延が発生)

特にラッシュ時の遅延発生の原因の8割は混雑によるもので、これを解消しない限り遅延も発生不可避となります。なんといっても中央線の混雑率は上り方面だと最大200%に達するくらい混雑具合がエグいです。そして各駅で多くの乗り降りがあるため、出発にも大きく影響が出てきます。

そこにグリーン車を導入するということは輸送力を増やすとともに遅延の拡大リスクを大きく高めてしまうことになるでしょう。

特急との料金差がほとんどない

中央線では1時間に約2~3本のペースで特急(「あずさ」、「かいじ」、「富士回遊」など)が走っています。特急は特急料金を払えば確実に座れる、なおかつ早く目的地に着くといった利便性や速達性に特化しているので通勤電車との差別化がすでに成立していました。

しかし通勤電車でグリーン車を導入するとなると話がまた変わってきます。というのも速達面ではまだ特急の方に軍配が上がりますが、料金面で特急との差別化が図れない可能性があります。

中央線の特急料金

中央線は2019年3月のダイヤ改正により自由席がなくなって全席指定制となりました。事前料金と車内料金とで大きく差がでて利用者が減るのではないかと危惧するかもしれませんが、指定席であっても空席であれば好きなところに座れる座席未指定券も誕生し利用者減少を防ぐ形にもなっています。

以下の表は例として主要駅から大月までの乗車料金(運賃+特急料金)をまとめてみたものです。

区間料金(普通車指定席の場合)
東京~大月事前:2,520円(1,520円+1,000円)
車内:2,780円(1,520円+1,260円)
新宿~大月事前:2,340円(1,340円+1,000円)
車内:2,600円(1,340円+1,260円)
立川~大月事前:1,740円(990円+750円)
車内:2,000円(990円+1,010円)

中央線のグリーン車料金を予想

現在首都圏近郊で運用されている2階建てグリーン車の料金は利用する区間などの条件によって変動します。特殊な料金設定をしない限り、中央線も同じような料金設定となるかもしれません。料金が変わる目安としては営業距離が50キロを超えるか超えないか、利用日が平日or土休日、購入したタイミングが事前(利用日当日まで)or車内によって決まります

上記の特急料金の例でいくと東京~大月はおよそ100キロ、新宿~大月はおよそ80キロ、立川~大月はおよそ50キロとなるので適用される料金が利用区間で異なってきます。また利用日や購入したタイミングも考慮すると以下の料金設定になります。

(乗車料金は運賃+普通列車グリーン車料金で換算)

区間平日土休日
東京~大月事前: 2,520円(1,520円+1,000円)
車内: 2,780円(1,520円+1,260円)
事前: 2,320円(1,520円+800円)
車内: 2,580円(1,520円+1,060円)
新宿~大月事前: 2,340円 (1,340円+1,000円)
車内: 2,600円(1,340円+1,260円)
事前: 2,140円(1,340円+800円)
車内: 2,400円(1,340円+1,060円)
立川~大月事前: 1,770円(990円+780円)
車内: 2,030円(990円+1,040円)
事前: 1,580円(990円+580円)
車内: 1,830円(990円+840円 )

土休日の料金は特急よりも200円ほど安く使えますが、平日は特急とほぼ同じまたは若干高めとなります。

ラッシュ時にも特急は運行されるので、満員電車に巻き込まれずに早く目的地に着きたいという方向で課金して特急を利用する方も当然います。しかし通勤電車に2階建てグリーン車をつけても速達性で劣ってしまうため特急との競合に負けてしまう可能性が高いです。

まとめ

中央線の通勤電車にグリーン車をつけるという大胆な計画は一見良いように思えても、その裏には今後予想される大きな課題を抱えていくことになります。

実際にサービスを開始しない限りどうなるかわからないのが実情ですが、中央線の通勤に大きな改革をもたらすことにもなるので今後の動きに注目ですね。

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