テレビなどでも紹介される「夜行列車」って一度は乗ってみたくなりますよね。夜行列車とは読んで字のごとく深夜の時間帯に走る列車のことで日中を走る電車とは違い、夜に電車に乗って翌朝に目的地に着くというものです。
一昔前は青い客車を機関車が引っ張って走る (通称:ブルートレイン) 光景が多く見られて当時は「動く豪華なホテル」と呼ばれ一世を風靡していました。しかし新幹線の高速化や延伸に伴い、次々と姿を消していき今ではほとんど残っていません。
そんな中、国内で唯一残されている寝台特急が存在します。
寝台特急サンライズエクスプレス
その寝台特急の名は「寝台特急サンライズエクスプレス」です。
サンライズエクスプレス(以下、サンライズ)は臨時運行の寝台特急(※1)を除いて唯一定期運行されている寝台特急です。個室完備であるため一人旅でも十分に利用できますし、最近だと女子旅でよく使われる寝台特急として注目され、帰省ラッシュでも満席(満室)になるぐらい人気となっています。
※1 ここではツアーや旅行パック等で利用可能なものを含め不定期で運行される列車のことをいう。(例:トワイライト瑞風、ななつ星、カシオペア紀行、四季島など・・・)
「サンライズ」のこと、もっと詳しく!
では、サンライズは一体どんな列車なのかをここからはご紹介します!
サンライズは、14両編成のオール2階建ての寝台電車です。サンライズの運行区間は東京から四国の高松(香川県)と山陰の出雲市(島根県)までを結んでいます。
「一つの名前の電車で複数の目的地まで行くの?」と思うかもしれませんが、正確に言えばサンライズは2種類に分かれており、東京~高松(※1)は「サンライズ瀬戸号」、東京~出雲市(※2)は「サンライズ出雲号」として運行されます。
下りのサンライズは東京から岡山までは連結して一緒に走り、岡山から先はそれぞれ別の目的地(瀬戸号は高松、出雲号は出雲市)へと向かいます。一方上りのサンライズは下りとは逆で、高松・出雲市をそれぞれ出発して岡山で合流・連結してから東京へ向かうシステムになっています。
運行ダイヤは下りは東京22:00始発で終点の高松には翌朝7:26着、出雲市には9:58着で、上りは高松21:26始発、出雲市18:51始発となり、終点の東京着は翌朝7:08着です。
※1 特定日(金・土・日)にはサンライズ瀬戸号は琴平まで延長運転を行う場合があります。
※2 繁忙期(お盆・年末年始)には臨時便でサンライズ出雲91号(下り)、92号(上り)が運転される場合があります。
サンライズ瀬戸・出雲の利用方法
切符の購入
サンライズの乗り方ですが、基本的には電車に乗る時と同じで切符を購入します。しかし買い方が少し特殊で、窓口のみで購入が可能です。(券売機では購入不可、ノビノビ座席のみネット予約可能)
発売日は通常の切符と同様乗車日の一か月前の午前10時からとなっていますが、人気の部屋はすぐ埋まるので、早めに計画を立てて購入するのが吉です。
空席(空室)かどうかを知る
空席照会はオンライン(JR CYBER STATION)で上り下りサンライズのノビノビ座席のみ検索が可能です。しかし、現時点ではノビノビ座席を除く上り下りのサンライズの個室の空席照会はネット経由だと検索ができません。空席を知るためには各鉄道会社のテレフォンセンター・お客様センターに電話問い合わせするか、みどりの窓口に直接行って確認しなければなりません。
実際に発券される切符は改札でよく入れている名刺サイズの切符とは異なり、長財布にすっぽり入りそうな紙幣サイズの切符が発券されます。
(※写真の切符に印字されている寝台料金は旧料金となっており、新料金はこれとは異なります。)
気になる設備とそのお値段は・・・?
みなさんが1番気になるであろうサンライズの料金はどうなのでしょうか?
実は乗る区間や乗る列車(「瀬戸」か「出雲」)、乗る部屋によって料金がそれぞれ異なります。というのもサンライズの場合、運賃・特急料金とは別に寝台料金が必要となります。普通は特急に乗る距離が長ければ長いほど、比例して運賃・特急料金は高くなっていきます。そこに寝台料金も上乗せされます。(寝台料金の中でも乗る個室によって料金が変動します。)
サンライズには全部で6種類の部屋があります。設備の違いで寝台料金にも差がありますが、どの部屋を取るかは乗車する際の予算に応じて決めましょう。
寝台個室
①A寝台(シングルデラックス) 寝台料金:13980円
A寝台シングルデラックスは1人用個室でベッドの他に洗面台や椅子・テーブルの設備があります。高級ホテルの一室にいるかのようで、高級感が漂っています。サンライズ瀬戸・出雲にそれぞれ6部屋しかない部屋で、繁忙期だとすぐに部屋が埋まります。
シングルデラックスにはタオルなどのアメニティグッズの他にA寝台専用のシャワーカードが付いています。A寝台のある号車(4号車と11号車)にA寝台専用のシャワールームがあるので、そこでシャワーを浴びることができます。
設備が豪華な分一人当たりの寝台料金が一番高いですが、人気の部屋でもあるので利用する価値は大いにありますね。
②B寝台(サンライズツイン) 寝台料金:15400円
B寝台サンライズツインは2人用個室でツインベッドが備わっており、親子やカップルで利用される方が多い部屋です。サンライズ瀬戸・出雲ではそれぞれ4部屋しかなく、シングルデラックスと並んですぐに埋まりやすい部屋の一つです。
2人で15400円ですが1人あたりの寝台料金は7700円なので、シングル2部屋分の寝台料金と同じ料金となります。
③B寝台(シングル) 寝台料金:7700円
B寝台シングルはサンライズ瀬戸・出雲にそれぞれ80部屋とサンライズの中で最も部屋数が多い部屋です。
1階部屋と2階部屋があり車内通路もそれぞれ分かれているのが特徴です。またシングルには平屋部屋もあり特定の号車の入口付近に備えられています。
④B寝台(シングルツイン)寝台料金:1人用-9600円 2人用-15100円
B寝台シングルツインは1人用あるいは2人用の個室で、シングルの1階部屋と2階部屋を一緒にしたような部屋です。サンライズ瀬戸・出雲にそれぞれ8部屋存在します。
一人旅で荷物が多いときに乗車するのはおすすめですが、1人あたりの料金がシングルよりも高めなので注意が必要です。2人で利用される場合は1人あたり7550円となるので1人より2人で利用したほうが少しだけお得になります。
⑤B寝台(ソロ) 寝台料金:6600円
B寝台ソロはシングルと同様1人用の個室で、サンライズ瀬戸・出雲にそれぞれ20部屋ずつあります。
1人用個室の中で安く乗れるのがメリットですが、シングルよりも狭いので荷物が大きい人や多い人にはやや不向きの部屋です。荷物がそんなになく、狭い部屋でも大丈夫な方は乗ってもいいと思います。
⑥ノビノビ座席 指定料金:530円
ノビノビ座席はカーペット敷きの就寝スペースで、サンライズ瀬戸・出雲にそれぞれ28席ずつあります。
上段と下段で分かれており一見個室のように見えますが、寝具が毛布しかなく雑魚寝状態となります。また個室とは違いカーテン以外の区切りがほとんどないため物音に敏感で落ち着いて寝られない方にはあまりおすすめしません。ただサンライズの中では一番安く座席指定料金しかかからない分、意外と人気のある設備です。寝台料金になるべくお金をかけたくない方にはおすすめです。
どの部屋を取るかはあなた次第
どの部屋もメリット・デメリットがあり、設備の豪華さでとるか値段の安さでとるかは人それぞれです。繰り返しにはなりますが、実際の乗車料金は「乗車区間」と「乗車する寝台」によって大きく変わってくるので、それも念頭に置いて乗る部屋をじっくりと考えた方がいいです。
ミニラウンジ
サンライズには3号車と10号車に休憩スペースとしてミニラウンジがあります。山側と海側の席にはそれぞれワイドな窓が設置されているので、双方の景色を楽しむことができます。
(夜行列車なので夜中は何も見えませんが、朝の景色は見えるはずです。)
自動販売機
3号車と10号車には飲み物の自動販売機が設置されています。しかし種類は少なく、値段もやや張るので予め駅の売店などで購入されることをおすすめします。
その他の設備
①セキュリティロック
ノビノビ座席を除くすべての個室には暗証番号式のカギが設置されています。 セキュリティ面においても、女性の方でも安心して個室を使えます。
【カギのかけ方】
①好きな4桁の暗証番号を決めて、ドア横のボタンで数字を入力
②「#(シャープ)」ボタンを最後に押す。(暗証番号を変更する場合は「*(アスタリスク)」ボタンを押して再入力)
【カギのあけ方】
最初に入力した4桁の暗証番号を入力すれば自動でカギをあけられます。
②コントロールパネル
個室内にはコントロールパネルというものがあります。(ノビノビ座席を除く)
コントロールパネルでは部屋の明かりを調節したり、アラーム機能を備えた時計で目覚ましをセットしたりできます。冬になれば個室内がぐっと冷え込むため、暖房器具(ヒーター)の調節も行えます。
またヘッドホンを使えばラジオを聴取できますが、トンネル内や電波の悪いところだと途切れることが多くあるので常時聴くことはあまりおすすめしません。
③シャワー室
3号車と10号車にはシャワー室が完備されています。シャワー室を利用する際はシャワーカード(6分間で320円)を別途購入する必要があります。シャワーカードは乗車後1時間も経たずして売り切れになることが多いので、乗車したらすぐに購入しましょう。
私の場合は乗車してからだとシャワーカードが売り切れてしまっているケースが多くあったので、乗車する前に自宅でお風呂に入ってから駅に向かい乗車しています。(冬だと湯冷めしちゃうのが欠点なので、あまりマネしない方がいいかも・・・)
人気の日にちと座席(個室)は・・・?
サンライズはGWや年末年始などの繁忙期と週末の土日(連休の場合、連休初日の前日と最終日)を中心に混む傾向があります。下り(東京発)だと金曜・土曜、上り(高松・出雲市発)だと日曜が人気です。(連休に土日を含む場合はこの限りではない)
その中でも特に出雲号(出雲市行)は上り下り関係なくすぐに席(部屋)が埋まります。そして室数の少ない個室や価格の安い部屋が売り切れるのが早く1ヶ月前から余裕を持って購入しようとしても、すでに埋まってるということも普通にあります。
反対に瀬戸号は繁忙期を除いて出発日直前でも空いていることが多く、比較的狙い目です。キャンセル待ちを狙うのもアリですが、予めどの部屋を取るか決めて早めに確保した方が無難です。
座席(個室)の中で早く売り切れる順としては、
シングルデラックス≫ サンライズツイン≫ノビノビ座席≫シングルツイン≫シングル≫ソロ
となることがほとんどです。
サンライズのメリット・デメリット
夜行列車としては魅力のあるサンライズですが、ここでは実際に数回利用して私が感じたメリット・デメリットを挙げていきます。
メリット
①日中とは違う景色を楽しめる
夜行列車なので夜中でしか見られない光景を見ることができます。天気が良ければ2階席から星空が見えたり、沿岸部のコンビナートの夜景はかなり綺麗です。
また列車の名前にもあるように、朝になると天気が良ければサンライズ(日の出)が見えるので朝の光を浴びるにはちょうどいいです。
サンライズの車内から日の出を見たい方は海側の部屋を確保しておくとじっくり眺められますよ。
②夜中に寝ている時間で移動できる
日中稼働している新幹線や飛行機とは違って夜に運行されるので、夜行バスと同じように寝ている時間を利用して移動します。乗車して寝て起きたら到着するという流れになるので、乗車時間は長いようで短く感じたりします。
個室内では完全にプライベート空間になり、個々の時間を好きなように過ごすことになります。(個室内ではしゃいだり、携帯電話の使用はなるべく控えましょう。)
退屈する時間がないのでその分ぐっすり寝て休むことができますよ。
③設備が充実していて衛生面でも利用しやすい
設備の整った個室だけでなく、シャワー室やラウンジなどの設備が十分にあるのもサンライズの利点です。各号車には洗面台やトイレもあり、清潔に使えるので衛生面でも安心して利用ができます。
④翌朝到着で1日の活動時間を確保できる
サンライズは出発日の夜に出発して翌朝目的地に到着するので、乗車後の1日の予定が組みやすくなります。下りの出雲市行のみ終点の到着時刻は10時前とやや遅いですが、一日活動する上では許容範囲でしょう。
デメリット
①値段が高め
日中を走る新幹線や特急列車とは違い、サンライズには寝台料金が別途かかります。ノビノビ座席を利用すれば新幹線とそれほど差はありませんが、個室利用だとどうしても数千円~1万円もの差が生まれてしまいます。
②日中でしか見られない景色を楽しめない
メリット①の裏返しにもなりますが、夜に走る分日中に見られる景色がほとんど見えません。
③車内販売がない
これが一番注意すべき点です。サンライズには車内販売が一切ありません。飲料のみなら自販機で購入を済ませられますが、弁当などは別途売店などで購入しなければなりません。
④遅延しやすい
サンライズは天候や運行状況によって遅れが生じやすいです。
天候においては雨や雪に弱く1~2時間程度の遅れのみで済むならまだいい方ですが、遅れが大幅に拡大すると運転打ち切りということも。大都市圏(東京・大阪など)を中心に鉄道網が発達している場所でダイヤ乱れが生じた場合、運転見合わせや遅延になりやすいです。
万が一、乗車した日に大幅に遅れが見込まれるときは新幹線で振り替え輸送を促す案内が入ります。これは新幹線に接続できるように新幹線停車駅にサンライズが臨時停車して追加料金なしで新幹線に乗車できる制度です。
この方法を用いて新幹線に振替乗車すれば遅れを取り戻すことが可能です。
ただし新幹線振り替え輸送を利用する場合は、放送案内で指定された列車に乗車しなければなりません。意外と接続時間が短いので注意が必要です。
もし乗車したサンライズが大幅遅延となり、「遅れそうなんだけど、どうしよう・・・?」と感じた場合は焦らずに車内の案内に従いましょう。
まとめ
今回はサンライズ瀬戸・出雲の基本情報をお伝えしました。
あくまでサンライズの最低限の情報を載せましたが、サンライズに乗車する際の参考になれば幸いです。
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